僕の婚約者〜気高き戦乙女〜

「信頼されなかったら、国政を任せてもらえないんじゃないかな……。僕だってキサラの役に立ちたいし……」

ブツブツとひとりごとを呟き、どんどんマイナスな考えに支配されていると、「ノーマン様、ルリです。入ってもよろしいですか?」と障子の向こうから声が聞こえてくる。

「ど、どうぞ!!」

キサラの妻が何の用だろう、と不安を覚えながらノーマンは返事をする。すると、障子がゆっくりと開いてルリが深々とお辞儀をして部屋に入ってきた。

「先程は、キサラが大変失礼致しました」

ルリが頭を下げ、「ルリ様が頭を下げることでは……」とノーマンは言う。ルリは何も悪くない。謝ることなど何一つないのだ。女性に頭を下げさせていることに対し、ノーマンは罪悪感を覚えた。

「私は庶民ですが、キサラとは幼なじみという関係にありました」

ルリがそう言ったことに、ノーマンは「えっ……」と驚く。王族と庶民が幼なじみなど、レグルス王国ではあり得ないことだ。ルリは優しく微笑み、続けた。