(結婚をしたら、僕はこの城に住むことになるのか……)

そう思いながら、ノーマンは自分の身なりがおかしくないか従者に訊ねる。従者は微笑みながら、「いつもと変わらず、お美しい姿です。きっと、この国の姫様もお美しいと思うはずです」と返してくれた。それにホッとしつつ、ノーマンはそっと服のポケットからロケットペンダントを取り出す。この中には、大切な写真が入っているのだ。

(きっと、とても綺麗になっているんだろうな。キサラ……)

ノーマンがロケットペンダントの中の写真を見ようとした刹那、「失礼致します」と凛とした声が響いた。キサラとーーー婚約者といよいよ対面するのだ。ノーマンの緊張はさらに増す。

スッと障子が開いた。そして、黒く長い髪を結い上げた美しい女性が現れる。美しく、しかし強い武力を持った国の強さが現れたその女性の姿に、ノーマンも従者たちも一瞬にして息が止まってしまった。

キサラは、鶴の柄が入った赤い色打掛を着てノーマンの前に座る。その動作すら瞬きをするのが惜しいほど美しい。