だって、昨日のことが事実なら、その場で泣いてしまう自信がある。


そんなの、桂木が困るだけだし、何よりこれ以上アイツに泣き顔を見られる訳には……




『誰かの特別になれるのって、羨ましいことじゃない?』




ふと、自分の言葉を思い出した。


私は、お互いがお互いを想いあっている関係に、憧れている。

だから彼氏が欲しかった。


私のことを特別だと思ってくれる、彼氏が。



ギュッと、手のひらを握りしめる。




もし、できるのなら。

私は、桂木の特別になりたい。


唾を飲み込んで、自動ドアの前に立つ。



それはガーッと音を立てて開き、私は店内へと入った。


そっと、レジの方を見る。

レジには誰も立っていなかった。