良かった。

桂木は、私のタイプじゃない。


タイプじゃないから、好きじゃない。




……好きじゃない、はずなのに。




ぽっかりと、穴が空いているかのように
胸のあたりが冷たくて、痛かった。




「桂木の、ばか」




アンタの苗字と、同い年であるということ、通っている学校。

水曜と金曜にコンビニでバイトしていること。


柔軟剤の香りがすること、右耳に2つピアスの穴が空いているということ。


これしか、知らない。


私、アンタのことこれしか知らない。



もっと教えてよ。

アンタのこと、知りたいのに。




「……っ」




こんなに悲しくなるのは、きっと、

桂木のことを好きになっていたからだ。