「……でも、ありがとね」
桂木にこんなことを言うのは不本意だけど、
助かったのは事実だし……
そう言うと、桂木は笑った。
それから、私の顔を覗き込む。
「っ、」
いつもは、レジを挟んで向かい側にいたから
いきなりこんな風に距離を詰められると、びっくりする。
意外と綺麗な顔をしているんだな、とか
柔軟剤の匂いがするな、とか
学校の制服は学ランなんだ、とか
ピアスの穴、右耳に2つ空いてるんだな、とか。
そんなこと考えてどうする、ってことで頭の中がいっぱいになる。
「ぅ、な、なに……」
目を逸らしたいけど、そうすると負けのような気がして。