腕は掴まれたままだ。
人通りのない路地裏に入ろうとするから、さすがに危機感を覚える。
「い、嫌だっ、離してってば」
「俺だって色々溜まってんだよね。暴れたりしなきゃ痛くしないからさぁ」
「大人しくしてろよ」と、冷たくそう言われて、私は血の気が引いた。
腕を掴む手に、香水の匂いに、この男に、激しい嫌悪感を抱く。
『アンタに向いてないよ』
昨日の桂木の言葉を思い出して、本当にそうだと思った。
私は、なんてバカなんだっ。
薄暗い路地裏。
壁に背中を押し付けられる。
あぁ、もうダメ。
ギュッと目をつぶった。
誰でもいい。
誰でもいいから、
誰か、助けてっ。

