「……全部聞いたよ、メルキュールから……。お前の前世のこと」

リオンが震える声で言う。僕のローブにポタリと水滴が落ちてくる。リオンも泣いている。こんな僕のために……。

「初めてノワールと出会った時、俺より歳下のはずなのにしっかりしていて、どんな敵を前にしても冷静に的確な指示をくれて、本当に歳下なのかずっと疑ってた。そういうことだったんだな……。ごめんな、辛い前世のことを話せたら気も楽になってたと思うのに……」

何で、何で、リオンが謝るの?僕の目から悲しみじゃない涙があふれていく。前世のことを黙っていることを決めたのは僕なのに。勝手に傷付いて、落ち込んでいるだけなのに、どうしてみんなは春の日差しみたいに優しいの?

「リオンが謝ることじゃないよ……」

僕は何とか言葉を口にすることができた。そして、自分の中にあった思いを口にしようと言葉を紡ぐ。ああ、やっと心からあの言葉を言えるんだ。……嬉しい。