僕、ノワールは俯いたまま泣き続けていた。どれくらい泣いているんだろう?時計なんてないから、全くわからない。でも、少なくとも三十分は泣いていると思う。

こんなに大泣きしたのは、前世でも今世でも初めてのことかもしれない。こんな時にそんなくだらないことを考えてしまう。

すると、コツコツと何人もの人が歩いてくる足音がした。聞き慣れた足音だから、物の怪じゃないことはすぐにわかる。

「ノワール……」

リオンの声がして、僕はびくりと体を震わせる。リオンの声は罪悪感と後悔に満ちていた。でも、僕はーーー。

どうすべきかわからない僕だったけど、ふわりとリオンに抱き締められて驚きで涙が一瞬止まった。

逃げなきゃ、そう思ってもリオンの抱き締める力が強くて逃げられない。体は抵抗する力なんて残っていなくて、嫌でもリオンの温もりに触れている。

ドクンドクン、と僕に聞こえてくる心音。リオンの心臓の音だ。大切な家族や仲間の温もり。僕の愛おしい音。その全てが、僕の心の中にある黒いものを溶かしていくような気がする。