ごきげんよう、愛しき共犯者さま


 屋上を出て、階段を降りる。

「……あ」
「あ?」
「……蒼汰先輩と、月島先輩」

 三階、そして、二階。降りて行く途中の踊り場にある窓に意識が向いたのは、なんとなく、だった。
 見えたのはグラウンドと、その手前にある並木。そしてその内の一本の木の下で、キスをしているふたり。
 視力はいい方だと自負しているけれど、まぁ、丸見え。丸見えですよ、おふたりさん。
 心の中でからかうように言って、はっとする。そういえば私は蒼汰先輩を好きな設定だった、と。さすがに直視はまずいよなと視線を外し、ちらりと隣に立つ兄を盗み見た。

「……っ」

 友人のいちゃついてる姿を見て、砂でも吐いてるんだろうなぁ。そう思っていたのに、そこにいたのは、目を細め、眉根を少しだけ寄せた兄だった。
 パッと見、気に食わないと全面に出ているのだけれど、微量の羨望が混ざって見えるそれはどこか切なそうで、またしても、はっとした。
 もしかして、お兄ちゃんは、月島先輩のことを……?
 脳内で言葉にすると、パズルの最後のピースが嵌まるあの瞬間のようにぴたりとそれが嵌まった。
 そっか、そうなんだ。
 思って、口を手で押さえた。

「千景?」

 うぐる、と喉が鳴る。
 兄はもう窓の方を見てなくて、私の様子に気付いたみたいだけど、返事をする余裕はなかった。

「っ千景!?」

 口を押さえたまま、兄を押し退けて残りの階段を駆け降りる。ぎょろりと目玉だけを動かして【女子トイレ】の表記を探した。