荒い呼吸を続ける結愛を見つめては自分の無力さを突きつけられた
医者は、医療は万能では無い。
分かっていても、結愛を目の前にすると現実を突きつけられた気分になる
せめて眠りにつかせようと程よいリズムで背中を揺すってやると
結愛は安心したようで、呼吸が整い始めた
彼女のギュッと力を入れられていた目はうっすらと開くようになり、危機的状況は回避できたようだ
俺は頬を少し緩ませながら結愛の頭を撫でて寝るように促した
程なくして結愛が眠りにつき、
呼吸が落ち着き始めたのを確認して聴診器で心音を聞く
消えそうな心音だった先ほどと比べると、幾らかマシになっていた
結愛の首の下に通していた腕をそっと抜き汗ばんだ前髪をタオルで拭う
顔色もほんの少し良くなったようにも見えた
こんな機会ではあるが
久しぶりに結愛の顔をまじまじと見ることができたような気がして
ずっとこうしていたいように思ってしまった
結愛の顔を眺めていると慌ただしく玄関の扉が開かれた

