大丈夫?…ではないか、どう見ても。

どうしたの?…いやいきなりそんなこと聞かれてもね。

しばらく考えた末に、ベンチの女の子に声をかけた。


「あれ?珍しく先約かあ」


…言ってすぐに心配になった。

大の男が泣いている女の子に迂闊に声をかけて、ナンパ野郎だと思われないだろうか。

女の子は俺の存在に気づいてなかったのだろう、振り向いたその顔は少し驚いたように目を見張っていた。

背後から声をかけたから驚いただろうな、ごめん。

すると女の子はバッと立ち上がりこう言った。


「ご、ごめんなさい。もう帰るので」


その声は掠れてて、今にも消えてしまいそうに感じた。

それでいて、透き通っていて可愛らしい声。

白く綺麗な肌と、その対象に赤くなった瞼が美しくすら思えた。

立ち上がった女の子の肩に、俺は気づいたら手を置いてベンチにもう一度座らせていた。