「どうしてここに?」

「谷山、ありがとう。」

「いい同期を持った事に感謝しろよ。」

「ああ。お前も気を付けて、日本に帰れよ。」

二人が同期だと初めて知った。
私は谷山さんの年齢も知らなかったし、二人がこうやって話すのを初めて見た。

「じゃあ、渋谷さん。青柳のこと泣かさないであげてね。」

谷山さんはそう言うと、車に乗り込み走り去って行った。

私はこの状況がまだ把握できていない。

「拓海、どうしてここにいるの?」

「週末に話をしようって言っただろう。」

言い終わるより先に、拓海に腕を掴まれ、私は拓海の胸の中にいた。

「恥ずかしいよ。」

「ここはアメリカだぞ。誰も気にしてない。」

確かに、そうかも。

「もっと恥ずかしい事するから。」

拓海が一瞬離れたかと思ったら、そのまま顔を寄せて、私にキスをする。

何ヶ月ぶりに、拓海に触れただろう。でも、この感触は絶対に拓海だ。
優しくて、激しくて、息もできない筈なのに吐息が漏れてしまう。

私は拓海にしがみ付く。
1ミリの隙間もないくらいに。 

拓海の舌が私の唇をこじ開ける。
私はそれに抗えず、身を任せてしまう。

無意識の涙が溢れて止まらない。

「莉奈、好きだ。」

唇を離さないまま、拓海が呟く。

「私も。」

結局、私は拓海が好きなんだ。

どれぐらいそうやっていたのか分からない。
でも、少し冷静になると、ここは私のホテルの前だったと思い出す。

取り敢えず、部屋に行った方がいい気がする。