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声の主は長澤さん。真顔でこちらに向かってきた。




(うっ、怖い。)





怜斗はビクッとして恭弥の陰に隠れた。長澤さんは俺たちの目の前で止まると夏樹の方を見た。




「右から、ドラムの涼、ベースボーカルの怜斗、ギターの恭弥です。」






と、俺たちを紹介した。





「こ、こんにちは。」

「……」



無言。




…え、何を話せばいい?3人で顔を見合わす。どうすればいいのか焦っていると、




「長澤だ。いつも夏樹が世話になっているな。」


そう、挨拶をされた。



「いえ、世話になっているのはこっちの方です!夏樹、めっちゃギター上手くて、俺たちにもたくさん教えてくれるんです。」




咄嗟に出たのがこれだった。




すると、長さんはクスっと笑った。



「そうか。」



それから長さんはちょっと待ってろ、と言い、何かを取りに行った。


「ん。」



そう渡されたのは紙袋。中には…






ギター用品のカポタストやピック、ドラムのスティック、さらに楽器の清掃用具。



「なんで、」



みんなで驚いた。スティックとかカポタストって地味にお値段高いよ?俺らがもらっていいものなのか?

 

「来てくれたお礼だ。」

「い、いいんですか?」

「学生は万年金欠だろうが。甘えておけ。」




そして今日はありがとうな、と言い、また裏に戻っていった。


いただいちゃったよ。うわ、このスティック持ちやすい。本当にいいのかな。



「よかったな。」



夏樹がふふっと笑う。静かに笑う感じ、似ているな。


帰り道、


「やっぱり身内だと似ているんだな。」

「え?」

「夏樹と長澤さんの笑い方ととか、性格っていうの?何か似てる。」









「……そうかよ。」





夏樹はそれだけ言って歩き始めた。