そのあとは特に演奏などもせずに4人で帰った。
「じゃあさ、夏樹俺にベース教えてくんね?」
「それいいな。」
「怜斗はいつからやってる?」
人に教えられるかな,と不安になりつつも引き受けた。あとは怜斗のベース歴次第だ。
「確か中2の終わり頃かな?受験でブランクあったから実質1年くらい。」
「じゃあまだこれから伸びるね。」
「やったァァ!」
少しかじってんのなら大丈夫か。
「怜斗はちっちゃい頃からダンスしてて、大会とかイベントにも出てるんだ。」
涼が言う。
「そうなの?」
「小学生の時からやってる〜。得意なのはHIPHOP!」
そう言うと歩きながら少し踊ってみせた。
おお、上手い。リズム感あるなら上達は早そうだな。
「恭弥もギター教えてもらえよ。」
「別にいい。」
…恭弥が1番絡みづらい。だって、
「恭弥はいつから楽器やってんの?」
「小6。何、マウント?」
「聞いたかったから聞いたんだよ。いちいち喧嘩吹っかけてくんな。」
「はぁ?」
ほら、こんなふうになるんだもん。
「恭弥は俺らの中だと1番楽器始めたのが早いよ。俺はドラム始めたの中1からだったから。」
「いいだろお前なんか!俺なんてまだ1年ちょっとだぞ‼︎」
怜斗がキーキー言ってる。
小猿って感じ。怜斗はふぃっとこっちを向くと色々聞いてきた。
「つーか夏樹と、長澤さん?ってどういう関係?」
「親戚。」
「へー!じゃあ如月って名字はお父さん方の名前?」
「俺の家父親いない。母親の家が如月で。」
「あっ、悪ぃ……」
怜斗はしまったとばかりに声のトーンを落とした。
「お前マジでそういうところだぞ。ズカズカ質問しやがって。」
「えぇ、え、ちょ,ごめんって…」
「大丈夫。名字珍しいから気になるわ。」
自分で言うのも何だけど、「如月」ってかっこいい名字だと思う。初対面の人にすぐ覚えてもらえるし,メリット多いよ。
駅前の通りで涼と恭弥とは別れる。2人の家は学校から自転車で30分くらいの距離だそうで。怜斗は俺と同じく、バス通学。
「夏樹って学校まで往復2時間かけて通ってるの⁈」
「うん。バスと徒歩で。」
「すごいなぁ〜。」
すると怜斗が「ん?」と考えた。
「でも夏樹の家のあたりなら電車通ってねぇ?学校の最寄りからだったらもっと早く着くと思うけど?」
電車の方が早いのは確かだけどさ、…嫌なんだもん。
「電車あまり好きじゃなくて。ラッシュ重なるの嫌だし、バスの方が定期安いし。」
「ほぉーん。」
それより、
「怜斗って本当に何でも聞いてくるんだな。」
「いや、これでも気をつけてはいるんだよ⁈会話続けようとするとプライベートなこと聞いちゃうだけで、」
「気をつけてはいるんだ笑」
あたふたしている様子を見て思わず笑ってしまった。
「…笑ったんですけど。」
???
「夏樹が笑った!初めて見た!」
「そりゃ笑うよ。人間なんだから。クラスの子といるときは普通に笑ってるよ。」
何をそんなに珍しがるんだよ。
「え〜でもレア!保健室で見た時はやべぇヤンキーかと思ったのに。」
「いちいちうるさいな。」
「これが俺なの!」
ーーーーー
「ただいま。」
「夏樹帰ってきたーー‼︎」
麗華ねぇと蓮が玄関にやって来た。
「おかえり〜。久しぶりの学校はどうだった?」
お母さんも奥からやって来て聞いた。
「疲れたけど楽しかったよ。」
「そう、よかった。」
「あのね、俺、軽音楽部入った。」
靴を脱ぎながら言う。
「軽音楽部?いいじゃない。お友達できた?」
「んー,まだわかんない。もうちょっと時間かかるかな。」
「そう。手洗って着替えてきな。夕飯食べよう。」
「うん。」
今日は一日疲れた。ほぼ1年ぶりの授業だし、クラスの子からは質問攻めだし、軽音楽部のアイツらはキャラ濃すぎだし。