大きな音がして演奏をやめた。入り口側を見る。
ー…人影
「誰ですか?」
俺は扉に向かって声を出した。
…出てこない…
隠れても無駄じゃね?だって見えてんだもん。
「誰?」
色葉がもう一度聞いた。
すると扉がガラッと空いて男子生徒が入ってきた。短髪で背の高い人。
(…靴紐が赤だ。てことは1年生)
清条高校は靴紐の色で学年を分けている。今年は1年生は赤,2年が緑,3年が青。
何しにきたん⁇と思ったら、
「絆創膏もらいに来ました。」
ってなんだよ。思わず突っ込みたくなるわ。
問題はそのあと…
「ちょっと中入ってくんなーい?」
浪川先生?入れんの?
「先生,俺隣の…」
(本当は『先生俺隣の部屋行ってもいいですか?』って言おうとした。)
間に合わずそいつが入ってくる。
バチッ
一瞬目が合う。しかもジロジロ見てくる。
ホント勘弁して…
まぁ、そりゃ見るか。多分原因はこの髪。
俺の髪は茶髪。こげ茶とかじゃなくて,どっちかというと色素が薄め茶色。なんだっけ?グレージュ?染めてない,地毛がこの色。初対面の人からはよく,染めてるの?って聞かれる。ストリートでは不良と思われて絡まれるし。
「あざーした。」
帰ったか…っと思ったのに‼︎まさかの。
「やっと見つけたって…うわぁぁ⁈」
「何…え⁈」
こいつの他にもう2人入ってきた。どっちも驚きながら。目が大きい身長低めの男子とネクタイ緩めてる大人っぽい男子。
「え,誰ッ⁈」
いやこっちが「え,誰⁇」だよ。あと指差すな。
そのあとは「あ,お邪魔しました〜♪」って大人っぽい方が言って出てった。
シーーン……
「びっくりしたぁ。」
彩音が口をポカーン( ゚д゚)と開けている。
え、いやコッチがびっくりよ。一度に3人も。
「もう行った?」
俺が聞く。
「行ったよ。」
色葉の確認を受けると頭を抱えた。
はぁーーーーー最ッ悪。
「あの人さ、あー、あの絆創膏貰いにきた人ね。ウチらと同じクラスだよ。」
「…………マジ?」
「うん。名前は確か〜…多賀涼!」
よりによってクラスメイト…
「なんでこのタイミング」
もう一度頭を抱えた。だって気分ノッて弾いてんのに入ってきて驚かれて。えぇ。
「でもあの3人結構びくってたね〜!」
彩音が笑いながら言う。すると色葉が
「そりゃそうよ。イケメンがギター弾いたんだから!」
イケメンなんて…
「やっぱ制服で来た方がいいのかな」
「それがBestよ。」
こっそり聞いていた浪川先生が言ってくる。
制服ホント嫌い。動きにくい,堅苦しい,しかも男女くっきり分かれるし。それに入学式とそのあと1,2回しか着てないし。
この学校の制服は男女グレーのブレザーに青色チェックのネクタイ,そして同じ柄のスラックスとスカート。
多分そこらの学校の制服よりかっこいいんでない?
あーどうすっかな〜
「そうだ!ギターの続き!」
そうだった,ギター弾いてたんだ。
「あぁ、ごめん。どっからだっけ?」
「『俺に従え仰せのままに』から」
「ん。」
続きを弾いて気がつくとあと10分で4限が始まるとこまできていた。
「じゃあね!バイバイ!」
彩音がブンブン手を振る。
「バイバイ」
2人を見送ると帰る準備を始めた。
「もうお帰り?」
浪川先生が聞く。
「はい。さよなら。」
「はいさよなら〜」
