「音楽は他人から評価されるためにあるわけじゃねぇぞ。」
そんなの知ってるけど、悔しいんだもん。
「ここからどう練習していくのがいいと思う?」
グスグス泣き続ける俺に師匠は毎回聞いてきた。今の自分に何が足りないのか、どう改善していく?小さな脳みそでいつも考えた。
「コードを間違えたから、もう一回復習する。…カッティングがブレるから手首をちゃんと固定する。あと…リズムが少しズレたから曲聞く。」
いい方法だ。そう師匠に言われると毎回ギター用のノートに改善点を書き込んだ。
「一つ、話をしよう。」
師匠は隣に座った。
「音楽ってのはな、音楽は透明なんだ。その人によって色が変化する。」
最初は意味が分からなかった。透明?まず音楽に色なんて存在するのかと疑問に思った。
「すぐに分かるものじゃない。何年も時間をかけてやっと自分の色が分かるんだ。」
自分の色
一体何色なんだろう。
「私の音は何色に見える?」
「それはわからねえな。だから自分で染めていくんだ。」
「染める?」
「ああ。自分の好きなやり方でいい。お前の音楽の色を探せ。ほかの誰にも支配されない、夏樹だけの色にするんだ。」
練習するしかなかった。
学校から帰ってやること終わらせたらすぐにギターの練習をした。ご飯を食べて、お手伝いをしたらすぐに練習。お風呂に入って着替えたらまた練習。
知識や技術が増えていくともっと音楽にのめり込んでいった。作詞作曲も始めた。今考えるとメロディー進行も語彙力も幼稚、見よう見まねで作ったような曲だ。
師匠からは一気にやるとわからなくなるぞって言われたけれど、このほうが音楽の世界が広がると思って始めた。
「何でそこで抑えるんだ。ちげぇだろ。」
「違う。それだとただの雑音だろうが。」
「カッティングは手首固定って前言っただろ。」
師匠からの指導も厳しくなっていった。
そのおかげもあって6年生になるころには、アドリブ対応や難しい曲も弾けるくらいになった。少しだけだけど、弾き話りも始めて1ヶ月に数回、ステージに立たせてもらった。
俺だけの色を見たい。
もっと上手くなって人の心を動かすことができるようになりたい。
これがギターを始めた経緯。
