学校に着いた。
校門はガランとしてて誰もいない。そりゃそうだ,授業中だもん。
たまーに遅刻とかで遅れてくる人と鉢合わせするときがある。そんときはもうやばいよな。変な目で見られる。
「おはよーございます。」
そう言って保健室に入る。
「如月さんおはよ。」
この学校…県立清条高校の養護教諭である浪川桜先生。生徒から話しやすいと評判がいい。
「また体操着で来たの⁇もうッ!」
「だって制服嫌なんですもん。」
「分かるけどー」
書類をいじりながら話す先生。隣の相談室に荷物を置くと、登校シートを記入しに行く。
出席の代わりみたいなもので、登下校時刻と課題の提出欄、それから担任への一言通達みたいなもの。
この保健室登校を勧めてきたのは浪川先生だ。俺の事情を知った上で担任の許可を得て登校している。
「あ,そういえば。」
浪川先生の声で作業を止めた。
「?」
「如月さん,部活何も入ってないわよね⁇」
「学校行ってないんで入ってないです。」
「それでね,如月さんに提案なんだけどね」
「軽音楽部、入ってみない?」
トクッと心臓が跳ねる。
…軽音楽……
「軽音楽…⁇」
「うん,今年うちの学校軽音楽部ができたのよ。まぁ正しくはまだ部にもなれてはいないらしいけどね。」
「去年まではなかったんですか?」
「んーと,2,3年前まではあったけど廃部になっちゃってね〜。今年の1年生がまた作ったみたいよ?
如月さんギター弾けるじゃん?もしよかったらどうかなーって。」
…………。
「…遠慮…しときます。」
「あらそう?」
「部活には入る気ないんで。すみません。」
「いいのよ〜,人それぞれ‼︎部活入ってたからいいです,ってわけじゃないしね。」
浪川先生のこういうところが好きなんだよね。無理に押し付けない。相手の意思を尊重してくれるところ。「予習やれぇ!」って押し付け強すぎる英語の先生より全然好き。
それより…
軽音楽か〜……
ってことは“バンド”だよな。
ーーー頭によぎるあの記憶…
