まっしぐら!!

きーんこーん、かーんこーん、

チャイムと同時に、勇が飛び込んできた。教室に先にいた、担任の大塚が、相当ダッシュしたらしくボサボサの髪の勇を一瞥して、教室全体に笑いかけた。

「皆さん、おはようございます。全員揃ったので、号令から始めましょう。じゃ、号令、日直さんお願いします。」

「起立、注目、礼。」

ぺこっとお辞儀をした真凜は、着席の声に合わせて椅子に座り、そのまま視線を勇に向ける。

(初日から遅刻ぎりぎりとか、とか。)

相も変わらずかっこいい勇に視線をロックした真凜は、先生の話を右耳から左耳へ、聞き流す。



皆、多分、私の告白の件、知ってるんだろうなぁ。もしかして、勇くん、迷惑だったり?あるかも。どうしよう。うわー、私、なにやってんの。好きな人に、秒速で告って、振られて、どっちも気まずくなっている。


「じゃ、朝の会はおしまいです。なにか連絡ある人はいますかー?」

「居ないようなので、じゃあ、授業の準備しててね。くれぐれも、授業始まってからもおしゃべりしてるってことがないよーに。」

「「はーーい。」」

緩い空気が流れる。高校生らしいというか、なんというか。うーっと伸びをして真凜は、数学の教科書をだす。

「ねー、まーりんっ」

真凜の机の前に仁王立ちのように立った夏奈が、にまぁと悪そうな笑みを浮かべた。その横で、綺那と千夏もまた、にやにやりとしている。

「な、なに?」

真凜が戸惑いの声をあげると、夏奈は綺那と千夏と目配せを交わし、代表するように言った。

「勇に話しかけなくていいんー?」

「え、え、だって、その、、」

狼狽える真凜に、綺那も悪ノリする。

「諦めないんでしょー。ほらほら、行きなってさ。」

「きっと待ってるよーーーう?」

「ちょっと、千夏まで。」

もう、と真凜が口を膨らませるが、心の中では、

(そうだ。私、諦めないって、決めたんだよな。)

思い出す。私、諦めたくなかったんだ。

カタン、と椅子がなる。