今日も伊集院家の一日が始まる。

「お嬢。起きろよ、お嬢」
広い豪華な部屋の入って左。そこには天蓋付きの大きなベットが置いてある。
俺『リョウ』は、今そこで気持ち良さそうに寝ているある女を起こしている。
この女はいつも寝起きが悪い。ゆさゆさと激しく揺すったって、起きる気配はない。
「ったく、仕方ねぇな」
俺はすぅっと空気を吸うと口を女の耳に近づける。


「起きろ!!お嬢!!」


耳元で大きな声を上げた瞬間、すっと女の足が振り上がると、そのまま俺の鳩尾めがけて蹴る。


どすっ!!


「あだっ!!」
鈍い音が響いた瞬間、腹に激痛が走り俺はうずくまる。
「う゛っ・・・し、死ぬ・・・」

「何やってるんですか、リョウ」

後ろを振り向くと、眼鏡をカチャリとかけ直し呆れ顔をしている黒髪の男『ショウゴ』が立っていた。
「しょ、ショウゴ・・助けてくれ・・・・死ぬ・・・」
「お嬢は起きましたか?」
「え、俺の話聞いてる?」
「質問に答えて下さい」
「え、だから俺の心配は?」
「してません。しようとも思いません」
「なんでだよ!!少しはしてくれよ!!」

オレたち二人がぎゃーぎゃーと言い合いをしていると、ガチャリとドアが開く音がした。

「おい、お嬢は起きたのか?」
ドアを開けて入ってきたのは金髪で、オレたちの中では一番背が高く、細マッチョな『ソウタ』だった。

「だから、なんでショウゴと同じ事聞くんだよ。見りゃわかんだろ」
「困った・・・そろそろ起きないと学校に間に合わないぞ」
ソウタはそう言うと、少し長めの前髪をかき上げる。
「どうするんだ、リョウ」
「オレに言うなよ」

「ねぇねぇ、お嬢って、珈琲にミルクと砂糖どっち入れるっけ?」

ひょこっと空いたドアから顔を出しながら聞いてくるのは少し癖のついたふんわりとした髪をなびかせながら、大きな目で上目遣いをしてくる『セイヤ』
「どっちもだよ。お嬢、甘党だから」
セイヤは俺たちの中では一番低身長なため、オレはセイヤを見下げながら答える。
「それより、早くお嬢のことを起こした方が良いのではないか?」
「そうですよ。さっさと起こして下さいよ、リョウ」
「無理だって。俺さっき蹴り入れられてたところ見てただろ。あれマジで死ぬから」