その夜、藪の奧の暗闇の中にそっと隠れた。
ねっとりと湿った苔に覆われた大きな石が地面に転がっている。
見上げると、葉と枝の間に蜘蛛が大きな巣を張り、数珠なりの夜露が月光を受けキラキラと光っていた。
アイツらが立ち入らない安全な領域だった。
ウシガエルの低い鳴き声が響く。
「いい子守歌になるだろうね。」
彼の言葉がよみがえる。
喉が渇く。心が渇く。
復讐を心に誓った。
決行は明日の夜。
アイツは数いる人間の中で特に危険だと教えられてきた。
近づいてはいけないと言われているから、どの家かは知っていた。
昨夜と違い涼しい夜。
風を取り込むために部屋の窓は開いていた。
網戸の隙間からそっと滑り込む。
カーテンの後ろで息を潜め様子をうかがった。
扇風機が回っている。
部屋の左奧の方からアイツの温度とにおいが漂ってくる。
喉の奥がチリチリと渇く・・・・・飢えだ。
体の中にいる新しい命のため、私もアイツのタンパク質が必要だ。
これは神様が与えてくれた絶好の機会か、はたまた悪魔の導いた罠なのか。
これから行うプロセスを頭の中で反芻する。
何度も何度も。
簡単だった。
部屋の電気は既に消えている。
アイツがしっかりと寝入るのを待つ。
あいつの温度を感じにおいのする方へ、そーっと回り込むのだ。
そして手の届かないだろう部位に着地。
ミッションを果たしたら、同じルートでこの場所に戻ってくればよい。
それだけだ。
母親としてとして行動するならば、これが安全ラインであろう。
きっと問題なく成功する。
だけど・・・
危険を冒してまでも復讐を遂げたい。
ジワジワと真綿で首を絞めるように、どうやったら効果的に苦しむだろうか、考えを巡らせた。
仲間に聞いた話によると顔を攻撃するのはダメージが大きいそうだ。
攻撃された箇所は赤く腫れる。場所だけに掻くことも薬を塗ることもままならない。
鏡を見るたびに私にやられたことを思い出させるだろう。痛くて痒くて悶えるだろう。
『これはいい』
そして、手足の指の先、耳。ここも格好の攻撃ポイントらしい。強烈な痛みや痒みは治まる事なく長期間にわたる。寝ることもままならない程の痛痒さをもたらす事ができると。
『素敵だ!
想像するだけでうっとりとする』
悩む・・・・
カーテン越しから観察する。
アイツは花柄のパジャマで横たわり、白い肌を露わにし、流れる長い髪の間から頬や片耳をのぞかせている。
狙いは定めた。
耳だ!!
最高のイメージを重ねる。
幼女の耳の上、柔らかい部分が目的地だ。
羽音に気づかれないようにするために、扇風機が首を降りアイツに向けたその風に乗る。
そして耳まで一直線に羽ばたく。
この使命を遂行するために6本の針を武器として使う。
着地後、まず、鋭い2本でザックリと柔い皮膚を切り裂き、他の2本の針でしっかりと固定。
痛みで存在を悟られない為に麻酔となる毒液を流し込むのに1本。
最後にとっておきの針でじっくりゆっくりとその血を吸い取る。
「ああ、喉が渇く。もう待てない・・・・」
飛び出そうとしたその瞬間にドアが開き廊下の光が部屋にこぼれた。
「ふぅ、危ないところだった。」
飛び出す前に起きたということに神の加護を感じた。
ねっとりと湿った苔に覆われた大きな石が地面に転がっている。
見上げると、葉と枝の間に蜘蛛が大きな巣を張り、数珠なりの夜露が月光を受けキラキラと光っていた。
アイツらが立ち入らない安全な領域だった。
ウシガエルの低い鳴き声が響く。
「いい子守歌になるだろうね。」
彼の言葉がよみがえる。
喉が渇く。心が渇く。
復讐を心に誓った。
決行は明日の夜。
アイツは数いる人間の中で特に危険だと教えられてきた。
近づいてはいけないと言われているから、どの家かは知っていた。
昨夜と違い涼しい夜。
風を取り込むために部屋の窓は開いていた。
網戸の隙間からそっと滑り込む。
カーテンの後ろで息を潜め様子をうかがった。
扇風機が回っている。
部屋の左奧の方からアイツの温度とにおいが漂ってくる。
喉の奥がチリチリと渇く・・・・・飢えだ。
体の中にいる新しい命のため、私もアイツのタンパク質が必要だ。
これは神様が与えてくれた絶好の機会か、はたまた悪魔の導いた罠なのか。
これから行うプロセスを頭の中で反芻する。
何度も何度も。
簡単だった。
部屋の電気は既に消えている。
アイツがしっかりと寝入るのを待つ。
あいつの温度を感じにおいのする方へ、そーっと回り込むのだ。
そして手の届かないだろう部位に着地。
ミッションを果たしたら、同じルートでこの場所に戻ってくればよい。
それだけだ。
母親としてとして行動するならば、これが安全ラインであろう。
きっと問題なく成功する。
だけど・・・
危険を冒してまでも復讐を遂げたい。
ジワジワと真綿で首を絞めるように、どうやったら効果的に苦しむだろうか、考えを巡らせた。
仲間に聞いた話によると顔を攻撃するのはダメージが大きいそうだ。
攻撃された箇所は赤く腫れる。場所だけに掻くことも薬を塗ることもままならない。
鏡を見るたびに私にやられたことを思い出させるだろう。痛くて痒くて悶えるだろう。
『これはいい』
そして、手足の指の先、耳。ここも格好の攻撃ポイントらしい。強烈な痛みや痒みは治まる事なく長期間にわたる。寝ることもままならない程の痛痒さをもたらす事ができると。
『素敵だ!
想像するだけでうっとりとする』
悩む・・・・
カーテン越しから観察する。
アイツは花柄のパジャマで横たわり、白い肌を露わにし、流れる長い髪の間から頬や片耳をのぞかせている。
狙いは定めた。
耳だ!!
最高のイメージを重ねる。
幼女の耳の上、柔らかい部分が目的地だ。
羽音に気づかれないようにするために、扇風機が首を降りアイツに向けたその風に乗る。
そして耳まで一直線に羽ばたく。
この使命を遂行するために6本の針を武器として使う。
着地後、まず、鋭い2本でザックリと柔い皮膚を切り裂き、他の2本の針でしっかりと固定。
痛みで存在を悟られない為に麻酔となる毒液を流し込むのに1本。
最後にとっておきの針でじっくりゆっくりとその血を吸い取る。
「ああ、喉が渇く。もう待てない・・・・」
飛び出そうとしたその瞬間にドアが開き廊下の光が部屋にこぼれた。
「ふぅ、危ないところだった。」
飛び出す前に起きたということに神の加護を感じた。
