成美が記憶を持ち始めたのは年長の頃。

保育園で一番最初に友達になったのが翔だった。

『しょうちゃんしょうちゃん!お絵描きしよーよ!』

毎日そんなことを言っていた気がする。

小さな頃から優しくて元気だった翔は、

『えー!僕鬼ごっこがいい!』

『わかったよぉ、じゃあ後でお絵描きね!』

『うん!』

いつも拗ねながら小さな小さな約束をしていた。

元々不器用だった翔は色塗りもマトモに出来なくて、いつも外遊びを望んでいた。

そんな翔につられてからか、成美のセリフも、

『お絵描きしよーよ!』

から、

『鬼ごっこしよーよ!かくれんぼしよーよ!』

と、屋外の遊びに変わっていった。

雨の日は2人で泣きながら先生にしがみついて、『外で遊ぶー!!』と嘆いていたものだ。

成美も、女の子の友達が少なくて、翔の近くにいると知らぬ間に『ボクっ娘』になっていた。

         ♥

南保育園。

成美と翔が通っていた保育園。

保育園の後には、南小学校、南中学校、と受験を受けずに進むことが可能だった。

だから成美は、中学までずっと一緒にいれると思っていた。

当時唯一の女友達だった佐藤 香織を合わせ幼なじみの3人は、卒園が近づいた頃、

『ぜーったい、ちゅーがっこーまで一緒だよ!!!』

『ずーっと友達!』

『まぁ…いいけど!』

と3人でグータッチをしていた。

だが、その夢が叶うことは無かった。