夏休みが終わり、学校が始まった。

あの日から、香織とも、隼人とも、そして翔とも会っていない。

あの後香織と夜まで遊んだが、翔のことが頭から離れなかった。

久しぶりの制服に身を包み、ネクタイを結んだ。

母が仕事の時は食事をマトモにとっていなかったため、スカートの空きがとても増えていた。

「こりゃ…ちょっと食べないと。今日のお昼は香織と食べに行こうかな。」

始業式なので、午前中で授業は終わり。

学校帰りに空いてるか、香織に聞こう。

リズム良く階段をおりて、「おはよう」と母に声を掛ける。

「あら上機嫌じゃない。先々週翔くんにあったからかなぁ?」

意地悪な笑みを浮かべてふふっと笑う母から目を逸らしながら、赤面する。

やがて朝ご飯がでてきた。

今日はフレンチトーストらしい。

母の作るフレンチトーストは大好きだが、たまにしか出てこない。

「やったぁ!いただきまーす。」

1口サイズに切り取り、口に入れる。

カフェで出していいほどのとろける美味しさが口いっぱいに広がる。

「うんま。」

「そういえば成美、今日お昼は?仕事だから、私家いないけど。」

「あぁ、食べてくるよ!」

もう1切れ口に入れ、噛み始める。

「ホント?じゃあお金出してくるね。」

母がリビングにある鞄に向かうので、急いで止めた。

「待って待って、いいよ。貯金あるって」

「えーだって…」と心配する母をよそに、

「お母さんは自分のお昼心配して!私ちゃんと貯めるほうだし。それ以上痩せないでね」

と話しながらフレンチトーストを食べ終え、立ち上がる。

「成美がそう言うなら…また困ったら言ってね。」

「はいはーい」

雑に返事をして、鞄を探す。

荷物も確認して、家を出る。

「じゃあ、行ってくるね!」

「行ってらっしゃい。気をつけてね。」

優しい母の言葉に押され、成美達の二学期が始まった。