「えーっと…キミは誰?」
昔よりも静かで大人っぽくなっているが、この人は正真正銘…
「え、待って、この人…翔!?」
「……うん」
香織の質問にはマトモに答えられず、
「ご、ごめん、ちょっと外の空気吸ってくるね。すぐ戻るから。すいません、」
と、翔に会釈して、外に出た。
ふーーーーーっ、と長い深呼吸をしても気持ちは収まらない。
「だって…フルネームで一緒だし…目元も翔ちゃんのまま…」
そう思うと目が潤み始めてきた。
「なんで…?」
座り込み俯いていると、ドアがカランカランと音を鳴らし開いた。
「あの。」
驚きながら振り返ると、そこには翔が立っていた。
急いで涙を吹き、「ど、どうしたんですか?」と何事もなかったかのように笑った。
「キミが外に出てから、先輩に言われたんです。」
♥
「あの人どうかしたんですか?」
「は?翔がなんかしたんじゃねぇの?」
「いや、僕知りませんって。」
手と首を両方振っても隼人は聞きそうにない。
「だってお前が来た途端逃げたじゃねぇか。ほら、話しかけてこいよ!」
翔の背中を勢いよく押し、「じゃあな、早めに戻れよ」と言ってもう1人の女の子と楽しく話し始めた。
♥
「てことで来たんですが…。俺がなんかしました?したなら、すいません。」
「え、あ、いや…ううん…同い年だしタメでいいよ。それより、覚えてない?」
涙を抑えながら、尋ねても、頭がはてなマークでいっぱいのような顔をしている。
「そっ…か、そーだよね。覚えてないよね。うん、ごめんね?」
立ち上がってその場から立ち去ろうとすると…
「え、待って。名前教えて貰ったら分かるかもしれない。。。から、教えて」
俯きながらも、か細く答えた。
「も…き……み…。」
「え?ごめん、よく聞こえない。もういっ…」
今度は勢いよく。
「望月 成美!これでもまだ…わかんないかな…!?」
叫んだ。
周りの人の目も気にせず、叫んでしまった。
我慢していたモノがボロボロと零れ落ちてきた。
それも気にせず、無理して笑った。
「私…待ってたんだよ、翔ちゃん。」
背を向けていた翔に顔を向けると、口を開けて唖然としていた。
「…成美」
わかったように翔は近付いてきた。
そして、成美の頭にポンっと優しく手を置いた。
「翔ちゃ…」
「早く、言えよ。」
顔をあげれば、翔は泣きそうなほどに優しい顔をしていた。
頭に手を置いたまま、翔の頭は、成美の肩
にあった。
「え?」
翔は脱力し、もたれかかって笑っていた。
「俺だって、早く会いたかった」
「翔ちゃん……あのね、私…」
自分の想いを今伝えるべきだと思ったが、咄嗟に今ではないと思ってしまった。
「なに?」
顔をあげ、頭から手を取った翔の耳は少し赤くなっていた。
「あ、ううん。何も。今度でいいや。それより、中に戻ろ。待ってるよ2人」
「そうだな。行こう」
2人で顔を見合せ、笑いながら店内へ入っていった。

