しばらく立ち、お腹が少しずつ溜まってきた頃。
「成美ー?もう少しで食べ終わるし、デザート頼んどこうよ」
「あ、そうだね。何にするー?」
もう一度メニューを開くと、鮮やかなパフェやプリン、ケーキが目に飛び込んできた。
「わぁーっ!こんないっぱいあったんだ」
後ろに隼人が居ることも忘れ、香織は
「まだお腹溜まってないし!おっきいもの頼んじゃおう〜!スペシャルパフェでいいや!」
と、沢山のフルーツが載ったパフェを指さした。
「えっ香織大丈夫!?」
「大丈夫だよーいつもこんなんだし。オムライス少なかったし!」
はぁ…と不安を抱えながらメニューに目を通す。
「じゃあ私、いちごみるくけーきで」
「えぇホントに足りるー?しかも女子力高!」
「別に足りるし女子力狙いじゃないからね!?」
沢山食べるのに、何故香織はこんなにも細いのだろう。
と、思っていると…
「ふっ…」
後ろから笑い声が聞こえた。
「え?」
香織と声を揃え、声の方を見ると、スマホを開きながら隼人が笑っていた。
「ええなー。香織ちゃん、いっぱい食べれて。でも、少食ぶる女子よりもそういう子の方がええよな。」
独り言のように言い、ははっと笑ってまたスマホを操作しだした。
「……うっ。それ、褒めてるんですか…」
「褒めてるよ。」
目線を変えずに、にこりと笑った。
遠くから若いお客さんや、店員も、隼人を見つめている。
「あ、ほら、香織ちゃん。声でかいって。皆見てるで」
(貴方を見てるんですよ。)
心の中でツッコんでいると、カランカランと、ドアの開閉音がした。
「いらっしゃいませ。」
店員の声と同時に振り向くと、そこには隼人と並ぶほどのかっこいい人がいた。
隼人が太陽とすれば、あの人は月のような人だ。
「何名様でしょうか?」
「あ、待ち合わせです。」
ニコニコした店員を横切り、奥の机を指さした。
「え?」
その人が指さしたのは、
「おう!翔遅いで!」
笑った隼人の席だった。

