バイクの音は思っていたよりも小さく、運転手と話をすることが出来た。
「ホントありがとうございます。名前聞いてもいいですか?」
「おう!俺は月島 隼人や。今中三やねん。来年高校!」
「ちゅ、中三!?」
バイクに乗っているし、大人っぽいからてっきり高校生より上だと思っていた。
「そら驚くわな!このバイクは俺の知り合いがくれたもんや。」
まさか2つ上の人だとは思わなかった。
「君らは…今年で中二くらいか?」
直球に当てられ、「あ、はい」と返事をした。
「私、望月 成美です…!後ろではしゃいでるのは佐藤 香織って子です」
苦笑いしながら後ろを向けば、香織は騒いでいる。
「バイクめっちゃ気持ちいい!将来バイク乗る、絶対!」
香織の様子を見て、「喜んで貰えて良かった」と優しく笑っていた。
「月島さん、あの…」
成美が話を持ち出すと、「隼人、でええよ」と言ってくれた。
「隼人、さん、関西の人ですよね?」
「あぁ、そうや。」
「なんで、ここに来たんですか?大荷物も持ってませんし…あ、家出!?」
成美が自分で驚くと、隼人は咄嗟に「ちゃうわ!」と口に出していた。
「俺の仲いい後輩が、こっちに引っ越したんや。引越し祝いと、遊びに行こうや、ってさっきの喫茶店で待ち合わせすることにして…」
「そうだったんですか…」
「待ち合わせの時間にまだ間に合う!急ぐでー」
「なんかすいません」
成美が遠慮がちに返すと、バイクはスピードを上げた。

