今日、無事に高校を卒業したわたしたち。お互い無事に進路も決まり、この春から晴れて専門学生、大学生となるわけだけど。
「あっという間だったよなー、三年間」
「ほんとね、一瞬だった」
それこそ、卒業した実感なんて未だに湧かない。
卒業アルバムの背表紙に寄せ書きをしているときも、卒業証書授与式で名前を呼ばれて返事したときも、教室に戻って最後のホームルームの時間、先生が涙ぐんで話しているときでさえも。友達とさみしいねって、また会おうねって、手を振ったときだって、ほんとはずっと、実感なんてしていなかった。
水色のリボンがトレードマークのセーラー服。焦げ茶色のローファーは、卒業まで残り数ヶ月、というところで底が抜けて買い替えたのを覚えてる。入学当初はブレザーに憧れていたのに、今はこれじゃないと落ち着かないと思うくらいには馴染んでいて。そんな制服を着るのが今日で最後だなんて、やっぱりちょっと、信じられないや。
「ぜんぶ、わすれちゃうのかな」
ぽつり、白い息とともに零れた声。小さく呟いたはずのそれは、静かなあたりによく響いた。
「ん?」と、リオが首を傾げるのが視界の端で確認できたのち、言葉を続ける。
「チャイムの音とか、午後の授業でうたた寝して先生に怒られたこととか、遅刻しそうになって必死に自転車漕いだこととか」



