頬を撫ぜる風が冷たい。
「ねえ、リオー?」
依然として視界には空いっぱい映るなか、「んー」と間延びした返事がきた。
パシャリ、パシャリ、とシャッターを切る音が聞こえる。
リオはいま、なにを考えてるのか。なにを思ってるのか。
あたしが写真を撮るとき、脳裏に思い浮かぶのはいつだってリオのことだ。
この写真、リオに見せたらどんな顔するかな、って。この気持ちを共有できたらな、って。
ふ、と視線を落とす。
レンズはわたしに向けられていて、その奥にある瞳が一瞬切なげに光り、揺れたように見えたのは、やっぱり気のせいなのかもしれない。
「……写真、明後日持ってくね」
「おー、さんきゅ」
きみとの距離はちかいのにとおくて、とおいのにちかい。なのに、触れることはできないまま、素直になれないわたしたちの距離はこのままずっと、地球と月のようなんだろう。
伝えられなかった想いは、どこへ消えてしまうのだろう。
それはきっと、群青に。



