僕の姿に気が付いた幻影は、鋭く尖った爪を僕に向かって振り下ろす。僕は、咄嗟に魔法筆で爪を受け止めた。

「……っ!」

その衝撃で、僕の体は床に叩き付けられる。近くにいた皆の小さな悲鳴が、聞こえた。

「……」

僕は立ち上がると、幻影を見据える。いつも戦う幻影よりも、苦しみや怒りが強いような気がした。

……僕一人じゃ、浄化するのは難しいかもしれない。皆を守りながらとなると特に……。

「……私の心は、皆に守られている……そんな気がした」

次の瞬間、半透明の黄色の膜が皆を覆う。

「遅れてごめんね。静弥くん……この空間に続く穴を開くのに時間かかってしまって……」

僕の隣に、優花が着地した。ここに優花がいるってことは……。

「俺もいるよ」

優花の反対側の僕の隣に、玲が現れる。玲は、僕と目を合わせると微笑んだ。

「……本当に、静弥は幻影に好かれやすいんだな。静弥の両親の言う通りだ」

「……どういうこと?」

「話は後だ。先に幻影を倒そう」

魔法筆を構えて、玲は言う。僕は、魔法筆を握り締めると頷いた。

「俺は今、夢と戦っている。勝負に勝って、夢を叶えるんだ」

玲が口にした瞬間、魔法筆は刀に変わる。