「……そうだね。幻影を浄化して皆を避難させたら、また戻ってくる」

僕がそう言うと、紫恩は無言で微笑むと頷いた。僕は、地面を蹴って校舎内へと飛び込む。

「……っ」

校舎内は、嫌な空気が漂っていた。幻影の苦しみや怒りが、この校舎内に満ちているような気がする。

「……先生!」

学年主任の佐藤先生を見つけて、僕は声をかけた。先生は、驚いた様子で僕を見る。

「太宰……今までどこに行っていた?緊急事態だ。教室へ戻りなさい」

「僕は、大丈夫です。それより、怪我人はいませんか?先生も、安全なところへ」

「怪我人は、いない。しかし、島崎がいなくて……今、探しているんだ」

島崎って……紫恩のことか……。

「彼なら、大丈夫です。僕も紫恩も物書きなので」

僕がそう言うと、先生は不思議そうに首を傾げた。

「……っ!」

先生の後ろに幻影が現れて、僕は咄嗟に先生の腕を引いて走り出す。

「……太宰?」

「僕の心には竜巻が起こってて、どんな言葉も弾き飛ばしてしまうんだ」

目の前に幻影が現れて、僕は立ち止まると魔法筆を幻影に向けた。筆先に現れた小さな魔法円から竜巻が飛び出す。竜巻は、幻影を呑み込むと幻影を壁に叩きつけた。