魔法筆を手に持って襲われそうになってた父さんと母さんの目の前に立つと、幻影の攻撃を魔法筆で受け止める。

「……静弥……?」

後ろから声が聞こえてきて、僕は魔法筆で攻撃を受け止めたまま後ろを向いた。

「ここは、僕に任せて」

それだけ言うと、僕は幻影に目を移す。

「……僕は、心にある海に身を投げた。僕の体には悲しみという重さが乗っている分、沈んでいくばかり。そんな僕を、誰も助けてはくれなかった」

僕が口にすると「重」という文字が現れて、幻影は地面に倒れ込んだ。立ち上がろうとするけど、なかなか起き上がって来ない。

「……僕は波に呑まれて、流されるがまま生きている。沈んで、浮かんで、流されて、また沈んで。気が付けば、深海まで沈んでしまっていた」

「波」という文字が浮かび上がると、僕の後方から押し寄せた大量の水が幻影を呑み込むと、幻影を壁に叩き付ける。

「……」

僕は幻影に近づくと、無言で幻影を見つめた。幻影と目が合うと、幻影は心なしか驚いているような気がした。

「……」

僕は幻影に微笑むと、幻影に向かって魔法筆を振り下ろす。幻影を浄化した後、僕は幻影が生み出された本を手に取った。

「君の心にも色を付けたかったんだ」

終わりの文章を言って、僕は元の姿に戻る。そして、両親を見つめた。

「……静弥……お前、物書きだったの!?」