「……こんな感じで幻影を浄化したら、本はこの部屋の空いてる本棚に入れて欲しいんだ」

玲に促されて、僕は本棚の空いてる隙間に本を入れる。よく見たら、この本……タイトルが無いな。

「ねぇ、玲。この本には、タイトルがないのは何で?他の本には、タイトルがあるけど……」

僕が玲を見つめると、玲は何かを考え込むような表情をした後、僕を見つめた。

「忘れ去られた本には、タイトルが消えるものがあるんだ。全部が全部消えるわけじゃないけど……理由までは分からない。誰かに読まれるようになると、タイトルはまた復活するよ。ただし、何回も読み返して、面白いって思えないと駄目だけど……」

「……なるほど。じゃあ、僕がさっきまで読んでた本も忘れ去られてたってこと……?」

「さっきまで読んでた本……?あぁ、幻影と遭遇した時に持ってた本か。あの本、タイトルがなかったの!?」

玲は、驚いた様子で僕を見る。僕は、無言で頷いた。

「気になって読んでみたんだけど、あの本……結構面白いね!」

僕の言葉に、玲と優花は顔を見合わせる。

「……初めて読んだ本の主人公が、力を貸してくれるとは……普通、昔から何回も読み返した本じゃないと駄目なのに……」

すごい、と言いたげに2人は僕を見つめた。そして、玲は「本当に、静弥には物書きの才能があるんだね」と微笑んだ。