猫たんがアタチの前をすごいスピードで横切った。

 急ブレーキをかけたように猫たんは前のめりになって止まった。

 猫たんが振り返る。

 黄色い大きな眼をアタチに向ける。

 アタチはカバンの中をまさぐりビスケットを探した。

 ヌメリは!!えっ!?

 猫たん……ヌメリという名前なの?

 ヌメリは右の口元を上げてニヤリとした。

 黒っぽい虎がらのヌメリが前を向きゆっくり歩き出した。

 その時、ヌメリが背中からいっぱい音符を吐き出した。

 (じゃまた美都ちゃん)

 音符が

 ○○○○
 
 の

 ××××××××××

 を歌い、雨上りの青空に吸い込まれていく。
 

 アタチはふうーと今日の憂うつを少し吐き出して前を向いた。

 こころのヌメリが少し溶けた気がした。