「…………そうかよ、」

 これ以上、振り回されたくない。その一心で吐き捨てた言葉に、抑揚のない言葉が返される。
 ごしりと袖で目元を拭って、視界をクリアに。すると、歪みのなくなったそこで、ゆらりと彼の()が揺れた。

「……別に、今さら……好きになってもらえるとか、俺だって思ってねぇよ」
「…………え、」
「……知りたく、なかったわ……こんな、気持ち、」

 目玉を包むそれをこぼさないようにしているのだろう。ただの一度も瞬かず、彼は音を吐く。

「……でも、もう、知っちまった、」
「……」
「……お前の、感触も、温もりも、」

 ぽたり。
 留まりきれず、彼の眼から落ちたそれが私の頬にぶつかって、弾ける。

「戻れ……っ、ねぇ、んだよ」

 だから、だろうか。

「お前が」
「……っ」
「欲しい」

 ゆらり、また視界が揺れて、歪んだ。