話題をふれば、応えてはくれる。けれど、あの二次会があった日が嘘のように、彼女から俺に話題をふることはなかった。

「もう、ここでいい」
「よくねぇ。家まで送る」

 彼女が酒を飲んでいないのもあるのだろう。食べ終わるなり早々に帰る姿勢を示した彼女を引き留めるのはなかなかに至難で、つまるところ失敗に終わった。
 だから、「ぜってぇ送る」と食い下がり、渋々それの了承は得たものの、やはり一筋縄ではいかない。
 あわよくば、と思ったのは否定しない。連絡先は知っているし、彼女から連絡はなくてもらこちらから連絡を入れればおそらく無視はされないだろうけど、それだけじゃダメだ。足りない。つけ回したりする趣味はないけれど、家を知っておいて損はないと思っているし、迎えにだって来れる。

「……しつこいな。送られたくないんだってば」
「夜道は危ねぇだろ」
「毎日通る道だし平気。すぐそこなの。本当に。五分でつくから」
「五分ありゃ拉致も誘拐も余裕でできるぞ」
「…………したことあるの?」
「ねぇわ。誰を拐うんだよ」
「……このろりこんめ」
「違ぇ」
「……まぁ、とにかく、私は本当に平気だから」

 なんて考えは、見透かされているのだろうか。
 彼氏の存在も、もちろん拒んでいる理由のひとつなのだろうけれど、とにかくもうこれ以上は踏み込ませてもらえないらしい。

「……あ、そ」

 あからさまにため息を吐き、ポケットに手を突っ込む。ごそり、ポケットを漁り、携帯を取り出して親指で操作した。

「そうです。だからこ」
「なぁこれ」
「こで……って、何」
「読んでみ」

 ディスプレイに目当てのものが表示されたのを確認してから、それを彼女に見せた。