味は保証する。
 そう言えば、(いぶか)しげな視線を寄越しつつも、彼女は個室の中へと入り、掘りごたつのあるそこへと腰をおろした。

「で?」
「あ?」
「何がしたいの、あんた」

 注文を終え、しばしの沈黙。数分と経たぬ内に烏龍茶と生ビールが届いたところで、口火を切ったのは彼女の方だった。

「……何が、って言われてもなァ」
「しらばっくれんな」

 情緒、安定してねぇのな。
 さっきまで普通に話していたのに、何がきっかけだったのか、また彼女の口が悪くなる。これは、もしかすると、もしかするのか。

「……一昨日のこと、上手く誤魔化せたんかよ」
「……」
「彼氏に」

 そう思って、音を吐く。誤魔化しようがないようにしたのは己だけれど、世界は広い。くそみたいな嘘にさえ騙される奴だって珍しくはないから、楽観視はしない方が無難だろう。
 なぁ、どうなんだよ。
 視線で返事を催促すれば、真向かいに座る彼女は、がり、と下唇を噛んだ。

「……誤魔化してない。話した」
「……へぇ」
「……傷つけた」
「……」
「……」
「……で?」
「……それだけ。これ以上、話すことはない」

 何だ、別れてねぇのか。
 思い通りにはいかなかった現状に「ふぅん」と相槌をうって、しゅわりと苦い液体を舌にのせた。