「聞いてくれてありがとう! 真央梨先生!」

「うん、頑張ってね」

「はいっ」


満面の笑みを向けると、彼女は教室を出て行った。
それを微笑みながら見送る。


初々しいなあ。
連絡がなくて泣いちゃうほど悩んじゃうんだよな。


そんな気持ち、もう持てないな。
寧ろ、私が連絡しないだろうし。



何か、素直に羨ましいなって思った。


あんな恋愛、もう一度したいって思っても無理なんだろうな。

高校生ぐらいまでに時間戻したいわ。


そうしたら、もっと色々素直になれたのかなあって。


まあ、今だからこそそう思えるわけで。
その時はそれが精一杯だったんだよね。



私はさっきの真中さんの笑顔を思い出して、ふふっと微笑むと扉を開けた。
職員室に入って先生方に挨拶をしながら、自分の机に座る。


「おはよー安西ちゃん」

「おはようございます」

「さっきまでワンコいたのに」

「……ワンコ?」


首を傾げた私だったけれど、一人すぐに思い浮かんだ。
あの、まさかですけど。それって。

私が聞くより先に辻先生が答えた。


「ああ、久住君ね」