「樫君って、部活やってたよね?」

「……はい」

「毎日練習あるでしょ?」

「……はい」

「帰りも遅かったりして、連絡出来なかったんじゃないかな」

「それでも、おはようとか、おやすみとか……一言でもいいのに」


ぐすっと涙を流しながら、そう言う彼女にふっと笑みが零れる。


「好きなんだね、樫君の事」


ぽろっと大粒の涙を頬に伝わせると、コクンと頷く。


「わかってるんです、本当は疲れてるんだって。
でも、彼女になって浮かれてるのは私だけなのかなって。
私の事、そんなに好きじゃないのかなって」

「大丈夫、樫君はそんな子じゃないと思うよ。
一言、寂しいなって伝えたらどうかな」

「……そうかな」

「うん。それで、何で連絡くれないのって怒ったらあっちもいい気持ちしないでしょ?
練習頑張ってるんだよって思うじゃない。
真中さん、彼の部活頑張ってるとこ、好きじゃなかったっけ?」

「……好きです」

「じゃあ、彼女として練習応援してあげないと」

「……そうですね。私、何か一人で勝手に不安になってました。
今日、伝えてみます!」


もう、彼女の目に涙は見えない。
代わりに、とってもキラキラとしていた。