「……無理」

「え?なに」



何が? そう言おうとしたのに、それは彼によって遮られた。



私の背中に腕が回って、ぎゅうっと抱き締められる。
力強く、ぎゅうっと。


私は何度も目をぱちぱちとさせた。



「あまりにも真央梨が可愛くて、やっばい。
暫くこうしてて。でないと、理性飛ぶ」

「…り、」


理性が飛ぶだと?
それは困る。

だから、じっと固まって動かずに息を潜めるけど。


ドキドキとさっきから、心臓の鼓動が聞こえて来た。
それが私のモノなのか、彼のモノなのかわからなくって、段々と顔が熱くなって来る。



「はあ、とりあえず収まった」



暫くぎゅうっと抱き締めた後、彼はぱっと腕を離して私と距離を空けた。

彼は髪の毛を掻き上げると、私を見ずにぼそっと言う。


「真央梨、天然勘弁な」



どこがですか。
天然って何。
初めて言われたんですけど。


それにこのドキドキ、どう対処したらいいのよ。


どうやら、私は訝しげな顔で口を真ん丸に開けてたみたいだ。