「バカ、そんな顔で見るなよ」


私は今どんな顔を春斗に向けているのだろうか。
春斗は私のことをふわりと抱き締めると、腕の中に閉じ込めた。


春斗の体温と、匂い。心臓の音が聞こえるんじゃないかって思うぐらいにうるさい。



「明日も早いよな」

「……うん」

「離れないの?」

「……聞き方が意地悪」

「まあね。俺、そういう人間だし」

「知ってた」


でも、それ以上に優しい人間だってことを知っている。
まだ出会って短いし、まだまだ知らないことの方がきっと多い。

でも、惹かれてしまったら最後だって思った。


「真央梨、好きだよ」


耳元で優しく囁く春斗。
背中に回した手できゅっと春斗の洋服を掴む。


――――春斗、好きだよ。


私は心の中でそう呟いた。久住君にちゃんと伝えてから、春斗に言うから。それまで待ってて。