大悟の目から涙がひとつぶこぼれ落ちた。


「-------ッ」


声をかけたかったけど、無理だった。


あたしは大事な人がいなくなった事がないから。


かける言葉が浮かばない。


大悟が制服の袖で涙をぬぐった。



「勝手な事・・・すんなや・・・。」


ひとこと呟いて、大悟は背を向け歩いていく。


「だいッ・・・」

「やめよ。」


追いかけようとすると昌悟さんが私の肩を掴んでとめた。


「昌悟さん・・・。」

「大悟くんはね、そろそろ受け止めんとあかんのん。」

「・・・・・・。」

「カナはな?起きることがあるかもしれん。」

「・・・・・・・・・。」

「でもな、はるかちゃんは戻って来ん。」


消えるような声で昌悟さんはつぶやき、歩き始める。


「・・・・・・そ、それはそうかもしれないですけど・・・。」


私は昌悟さんの隣を歩き出す。


「大丈夫。」


昌悟さんが微笑みながら私の頭をぽんぽんと軽くたたく。


「・・・・・・。」

「・・・・いろちゃんなら大丈夫。」