「何が?」
「俺はずっと紗枝に不誠実だった……」
「今更謝るの?」
紗枝の低い声に返す言葉を無くす。
本当に俺は何もかもが遅くて最低だ。
「私は蒼のことが本気で好きだったよ」
「うん……」
「蒼が日野を想うのと同じくらい」
紗枝はずっと俺のそばに居た。紗枝のことを本気で好きじゃないと知りながらも俺から離れなかった。
「本当にごめん……」
「ほんっとに遅いんだよね蒼は。そんなんだから日野に呆れられるんだよ。てか何で別れたの? 日野にフラれることしたの?」
「っ……」
「だって何年も好きだったんだから日野も悪い気してなったでしょ?」
「紗枝が……」
「私?」
「俺と紗枝が組んで薫をからかって遊んでるって勘違いされた……」
「何それ」
紗枝は呆れた顔をした後にハッと何かに気付いた顔をした。
「私がそう思い込ませたかも……」
「どういうこと?」
「学祭の時……蒼に会いに来てた日野に、蒼は罰ゲームで付き合ったって言っちゃったから……」
「え……何で紗枝がそれ知ってんの?」
「罰ゲームで日野に告白したことはみんな知ってるでしょ。マジで付き合ってるって知ってたのは女子だけかもしれないけど」
確かに罰ゲームのことは友人のほとんどが知っている。けれど告白するところは誰にも見せていないから薫と付き合い始めたことは秘密にしていたつもりだった。
「薫と付き合ってること、知られないようにしてたのに……」
「私は気づいたよ」
紗枝は不機嫌な顔で呟いた。
「ずっと蒼を見てきたから……」
そう言って突然立ち上がるとカバンを持って寝室に行ってしまった。
「紗枝?」
話が中断してしまったことを不安に思い声をかけるとカバンを持って戻ってきた。
「私の荷物はこれで全部持ったから」
「ああ、うん」



