罰恋リフレイン


「そうだ!」

蒼くんは何かを思い出したのかテレビの前に行くとその下の台の引き出しを開けた。

「これ覚えてる?」

引き出しから出てきたものを見た瞬間目を見開いた。蒼くんは丸みを帯びた人形を指でつまんでいる。

「このキーホルダー懐かしいでしょ」

それはお揃いで買って氷室さんに取られてしまった片割れだ。

「ああ……うん……」

「薫がなくしたって言ってたやつ、あれから見つけたんだ」

「そうなんだ……」

本当はなくしたわけじゃない。取り返せなかった自分が情けなくて悔しくて、蒼くんになくしたと嘘をついたのだ。

「薫に言う機会がなくて……でも今返せてよかった」

戸惑う私の手に蒼くんはキーホルダーを載せた。そうして自分の家の鍵がついたキーホルダーを並べる。

「これでお揃い復活」

蒼くんが嬉しそうな顔をするから私も無理矢理笑顔を作る。
返してもらう必要はなかった。これは氷室さんが奪ったものだから、今更返されたっていい気分じゃない。

食後に蒼くんがまだ見ていないというアニメ版の映画の二作目を観ることになった。蒼くんがわざわざ配信サイトで課金してレンタルした映画はレビューが数百件と総合評価が星4と高評価だ。アニメ版、実写版共にヒットして、原作マンガを知らない世代にも知名度が広がった。

この二作目を今日も積極的に観ようとは思えなかったことを蒼くんには言えない。氷室さんにマンガ好きを気持ち悪いと言われ、直後に専門学校へ進学して忙しくなったタイミングだったから自然と熱意がなくなっていった。

「やっぱり薫は何度も観てるからつまらない?」

蒼くんが横に座る私の顔を覗き込む。