翔はそう言って数メートル先にいる幼馴染の香菜を顎でしゃくる。

「香菜なら俺に告られても冗談だろってソッコーで振ってくれるしね」

「つまらないなー。でもそれなら誰が罰ゲームになっても文句ないでしょ」

発言に影響力のある氷室に、みんなが戸惑いつつも了承した。
単純な同級生には呆れる。氷室がちょっと顔がいいからって従う空気は何なのだ。

「でも叫んだかどうかなんて他のやつにはわかんないじゃん」

「だから実行委員のやつに確認してもらうんだよ。俺連絡しとくから」

罰ゲームを言い出した生徒はスマートフォンで幽霊役の生徒にメッセージを送った。

こんな時は気軽にペアを組んでくれる幼馴染がいる翔が羨ましい。

周りはどんどんペアができている。男子も女子も照れながらペアが決まった者同士でホールの端に移動していく。

「紗枝も早く行きなよ。夏城が誰かに取られちゃうよ!」

俺の後ろで何人かの女子が興奮気味に騒いでいる。聞きたくもなかったけれど、どうやら氷室が俺を誘おうとしているようだ。
そんな面倒なことは嫌で実行委員の近くに素早く移動する。

氷室が俺に気があるということには薄々気づいている。けれど恋愛には興味ない。

レクリエーション担当の男子生徒が持つ箱の前に立った。中身の見えない箱の側面の穴に手を入れて折りたたまれた紙を掴み開くと、『40』と書かれている。

「40番っと……」

男子生徒はホワイトボードに『40番 夏城』と書いた。

「これを見た同じ40番の人が夏城くんに声かけてくれるから」

「了解……」

同じ40番の人は誰だろう。変なやつじゃないといいんだけど。

「40番の人?」

声をかけられ顔を向けると大人しそうな女子が俺に向けてくじの紙を見せていた。