薫が心配だから家まで送っていきたいし、ギリギリまで一緒に居たい。
「蒼くんの家とは反対方向だから帰るの遅くなっちゃうでしょ。今度は蒼くんを疲れさせたくない」
気遣いが嬉しくて薫の言葉に従うことにする。でもやっぱりここで別れてしまうことが寂しい。
駅じゃなければ別れのキスをするところなのに。
俺が何を考えているのか分かるのか、薫は「ここじゃだめだよ」と苦笑する。
「人がいなければ抱き締めてるのに……」
「蒼くんはすぐ私に触ろうとするよね」
「薫が好きで仕方ないから」
目を見てはっきり伝えると薫も真剣な顔になる。
「私も蒼くんが好きだよ」
「っ……」
初めて薫の口から「好き」と言ってくれた。その言葉の破壊力に照れて言葉を失う。
「蒼くん照れてる?」
「…………」
「ねえ」
顔を覗き込まれて素直に「そうだよ……」と小さく呟く。
薫からの「好き」のせいで全身が熱い。今きっと顔が真っ赤だ。
「そんなに喜んでくれるのならもっとたくさん好きって言ってみようかな」
「嬉しいけど心臓に悪いから時々でいい……」
「そんなに不快なの? 私が好きって言うと苦しい? 私はたくさん言っていこうと思ってるのに」
「っ……」
叫びそうなのを必死で抑える。顔がにやけるのを隠せない。
ああもう……そんなこと言われたら帰したくなくなる。離れないように抱きしめて、たくさんキスがしたい。こんなにも薫が好きすぎて困る。
今すぐ次に会う約束をしてしまおうと口を開きかけて再び俺のスマートフォンが鳴る。無視して薫を見ると困ったような顔をして俺を見つめ返す。
「もう私行くね」
「うん……また連絡する」



