「うん。ありがと……」
笑いかけると薫も笑顔を返してくれる。
今日はたくさん笑顔を見れた。目が合うと嬉しいし、ちゃんと俺を見てくれている気がする。
距離が縮まっていく。自然なカップルになれているって思ってもいいだろうか。
「次は俺が行きたかったところに行ってもいい?」
「いいよ。どこ?」
「薫も好きなとこ」
そう言うと首を傾げる薫の手を引いて施設の奥に歩いていく。
気づけば無言になった薫を不思議に思いながら連れてきたのは好きだったマンガ雑誌の公式ショップだ。今日一番の目的の場所。ただただ薫を喜ばせたい一心で。
「懐かしいでしょ。初めて二人でデートしたとこ」
「うん……」
心なしか元気がないような返事を不思議に思いながらも中に入る。
薫が好きな新選組のマンガは既に連載が終わった。あの頃と比べてグッズは少なくなったけれど、去年実写映画化されたこともあって演じる俳優のグッズコーナーができている。
「アニメ版も二作目を観れてないんだよね。薫と見たかったから」
俺はマンガに出てくるマスコット的な丸いキャラクターのぬいぐるみを手に取った。
薫の顔を見ると無表情で実写映画のポスターを見ている。それは想像していた反応と違っていた。
「薫はまだこのマンガ好き……だよね?」
話をするとテンションが上がりすぎて引くほど大好きだったマンガ。連載が終わってもメディア化が止まらない作品をずっと薫は好きでいると思っていた。



