「大丈夫だと思う……あんまり乗ったことないんだけど……」

「じゃあ挑戦してみよう。だめそうだったら怖くないの乗ろう」

ウォータースライダーに乗ると落下する直前まで怯えた顔をしていた薫は、落下の衝撃で水しぶきを受け髪を濡らしながら涙目で笑う。
観覧車に乗ればおっかなびっくり下を覗き込む。俺が余裕で景色を楽しんでいるのに、向かいに座る薫は手摺にしがみ付いている。「怖いなら手繋ぐ?」と冗談で言うと迷いながらも頷く。
立ち上がって横に座ると片手を手摺から離して俺の手を握った。
高いところが苦手なのだと初めて知ったからアトラクションエリアに来たことは失敗だったかと思ったけれど、素直に甘えてくれるところが可愛くてこのまま観覧車が止まればいいのにと願ってしまう。

観覧車から降りても薫は手を放そうとはしなかった。少しは信頼してくれたかもしれない。だから調子に乗って指を絡めると驚いたように俺の顔を見たけれど、嫌がらなかった。照れているのか困ったように笑って。

ホラーハウスの前を通ったけれどお互いにここには入ろうとしなかった。薫は怖いものが苦手だと知っていたし、肝試しのことを思い出させるものは遠ざけたいと思ったから。
繋いだこの手を離してしまう要因を取り除かなければ。

昼食にしようと店に入るとメニューを真剣に見つめる。料理が運ばれてくると仕事の参考にするのか写真を撮り始める。

「ごめんね行儀悪くて……」

「いいよ。仕事のためでしょ?」