「俺はずっと薫のことを考えてた。後悔と、自分に対する怒りと、薫に会いたいって。そればっかり思ってた」
「そうなんだ……」
気恥ずかしくてうまい言葉を返せない。
「薫のことが好きだから。俺の気持ちを疑わないで」
疑わないで、か。
私がまだ罰ゲームの延長だと思っていると蒼くんは気づいている。
気持ちは嬉しい。これが本当に本心だとしたら。
蒼くんはじっと私を見つめる。何かを言いたそうな顔をして。
帰らないのかな? まだ何かあるの?
「蒼くん?」
「あの……さ……キスしていい?」
「え……」
「だめかな? まだ早い?」
不安そうに私を見つめるからだめだなんて言えなくなる。
思わず周りを確認する。家の角にも電信柱の影にも誰も見当たらない。
「薫、今ここには俺たちしかいないから」
「でも……私とキスなんて気持ち悪いでしょ。罰ゲームだとしか思えないし……」
「マジかよ……まだ疑う?」
蒼くんの顔が歪んだのが街灯の明かりに照らされて確認できる。
「そうだよな……疑うよな……」
何と答えていいか分からずに私も下を向く。
蒼くんは私とキスするの嫌じゃないの?
「はあぁ……」と溜め息をついた蒼くんは私を見据える。
「薫とキスしたい」
甘えるような声で言われるともう拒否なんてできない。
少しずつ心を寄せたふりをしないと蒼くんへの復讐が遠くなる。
キスなんてどうってことはない。ただ唇をくっつけるだけなんだから。今は蒼くんを満足させることが大事。
そう自分に言い聞かせて蒼くんに向けて小さく頷き目を閉じた。
蒼くんの腕が私の腰に回る。体を密着してくると私の唇に柔らかいものが触れた。



