罰恋リフレイン


動揺を隠すために私はカクテルを一気に飲んだ。蒼くんは店員さんを呼んで追加のビールと私の分のカクテルを注文した。

怒り以外の感情を露わにする蒼くんの態度にどんどん冷静さを取り戻していく。

あからさまな嫉妬が嬉しい。もっともっと嫉妬して。
でも、私の気持ちは蒼くんにはもうあげない。






店を出ると今夜も家まで送ってくれるというので甘えることにした。
帰るまでの間仕事のことや香菜と翔くんの話はできても、高校の頃の話は一切しなかった。傷を抉るということがお互いに分かっていたから。

駅から家までの道を歩いていると背後から車のエンジン音が聞こえた。車道側を歩いていた私は蒼くんに優しく腕を引かれた。

「こっち歩いて」

そう言って私を歩道の奥に誘導する。

「あ、ありがとう……」

車が通りすぎると蒼くんは掴んだ私の腕をパッと放した。

「ごめん」

小さく言った言葉は何に対しての謝罪か分からなかったけど、すぐに腕を掴んだことだと気づいた。私が蒼くんに近づかれることに抵抗があると気づいているのだ。

高校の時もこんなことがあった。自転車にぶつかりそうになって蒼くんが手を引いて助けてくれた。そうしてそのまま初めて手を繋いだ。
だから半歩前を歩く蒼くんの手に自分の手を重ねた。思いもよらない行動だったのだろう。蒼くんは驚いた顔をして私を振り返る。

「いいの?」

「うん。蒼くんとやり直すって決めたから、手を繋ぐのもやり直す」

「そっか……」

蒼くんはそれだけ言うと前を向いた。口元だけは照れているのか緩んでいる。

家の前に着くと蒼くんは私と向かい合った。

「あのさ、薫はさっきこれまでどうしてた? って聞いただろ」

「うん」