「仕事ではどんなメニュー考えてるの?」
「今はフルーツサンドを考えてるの。その後は新作のチーズケーキの予定なんだ。でもまだ食品開発に異動して1年だから、ほとんど冬木さんに助けてもらってる」
「そっか……」
低い声でそう言うと蒼くんはグラスのビールを飲み干す。
「冬木さんってすごいんだよ。会社の店舗のほとんどのメニューは冬木さんが考えてるし」
笑顔で話す私に対して蒼くんは無表情で黙る。機嫌が悪そうだ。
もしかして、私が冬木さんの話をすることが嫌なのかな。
嫉妬という文字が頭に浮かぶ。
蒼くんが嫉妬してくれているのだとしたら悪い気がしない。本当に私のことが好きなのであれば、そうやってもっと私のことを考えてほしい。
「ホテルで修行してたことがあるんだって」
「薫は俺と付き合ってるんだよね?」
「え……そうだけど」
突然口を開いたかと思ったらまるで睨むような顔をして私を見つめる。
「冬木さんの名前出さないで」
「あ……」
「俺だけを見てよ」
「っ……」
熱を込めて見つめられ、まるで蒼くんに捕らわれてしまったかのように体に力が入らない。
「もしかして蒼くん……嫉妬してる?」
私は場の空気を和ませるために軽い口調で言うと「そうだよ」と低い声が返ってくる。
「薫が付き合いたいって思ってる男の話なんて聞きたくないよ」
「…………」
あまりにも真剣な顔で言うから顔が熱くなる。からかったつもりだったのに蒼くんは真っ直ぐ気持ちをぶつけてくるから罪悪感が湧く。
「でも冬木さんは好きな人がいるから……私はどう頑張っても付き合えないし……」
「頑張らないでいいよ。冬木さんに薫はあげない」
「い、言ったでしょ、蒼くんとやり直すって」



