「蒼くんはこれまでどうしてた?」
「どうって?」
「今仕事何してるの?」
「スポーツクラブとかの運営会社に入ったよ」
「あ、じゃあまだダンス続けてるんだね」
「ダンスはやめたよ」
「え?」
第二体育館で踊る蒼くんの姿を今でも鮮明に思い出せる。すごくダンスが大好きだったのに。
「あの学祭の後、ステージで派手にコケて辞めた」
「そう……なんだ……」
私と蒼くんが別れたから動揺したのだろうか。なんて、自意識過剰かもしれないけれど考えてしまう。
「ダンスを辞めて水泳始めたんだ。そっちも結構順調で、こうして就職に活かせたけど」
「水泳のコーチなの?」
「いや、主に企業向けの営業。健康相談とか、クラブへの勧誘とか」
蒼くんが営業だなんてイメージできないけれど、知らなかった6年分の蒼くんを知れて嬉しい。
「薫はお菓子の道に進んだんだね。俺薫の会社の運営する店にケーキ買いに行ったことあるよ」
「ありがとう。私が洋菓子担当なんだけど、冬木さんに見てもらわないと進まなくて」
「へー……」
冬木さんの名前を出すとほんの一瞬蒼くんの表情が変わった気がした。
「あのさ……薫の作ったもの食べたい」
「そうそう、前はよくお菓子作ったよね」
「ご飯」
「え?」
「薫が作ったご飯食べたい。結局食べれてないし」
「そうだね……」
学園祭の後蒼くんの家で作る予定だったけれど結局叶わなかった。
「でも最近軽食中心にしか作ってないからどうかな……実家に住んでるとご飯はお母さん作ってくれるし」
「無理にとは言わないから」
蒼くんは不安そうな顔になる。私が嫌がっていると思っているのだろう。
「そのうちね……」
社交辞令のつもりで言ったけれど、蒼くんは安心したような顔になる。



